06.07.28 記
若い女の子を泣かしてどうするの
このルビーの指輪は45.000円、この18金の指輪は7.000円と、
二週間まえに私が値を付けたと、その女の子は言う。
確かにこのルビーの指輪は45.000円と付けたが、
そうですか、と言って持って帰ったのを覚えている。
しかし同時に18金の指輪は6.000円と付けたことも覚えていた。
念のためもう一度グラムを計ると6.000円がいいとこだ。
それで、確か6.000円だったがと言うと、
いえ7.000円に間違いありません。メモしましたから。
メモの用紙は家にあります、と言う。
どうしたものかと考えていると、
メモを見ても私の控え間違いかも知れませんし、と女の子は変わってきた。
それでこう言ってみた。
このルビーの宝石を幾らに評価するかはプロでも時により違いは起こる。
しかしこの18金のリングは重さによるから、
これを7.000円と言う筈がないねん。
しかしどうしても7.000円と言ったと言うなら7.000円で買おう。
その代わりこのルビーの指輪は、今日は40.000円や。
それでよかったら身分証明書を見せて、
この買受け票に、名前、住所、生年月日を書いてください。
きっと私が前に付けた45.000円の値はダントツに高く、
二番手の店はもっと安かったのだろう。
だから仕方なく今日は40.000円でも売ろうとするが、
買受け票に名前と住所を書いている途中で、
高く売ろうとして、返って安くなって情けなくなってきたのだろう。
こないだは45.000円で、今日は何で40.000円なんですか、と涙ながらに聞く。
君が嘘をついた「罰金や」と言うと、ウワァーと一段と大きな声で泣き出した。
いかにもしっかりした、女子アナでも目指そうかという20才の女性が、
たった1.000円サバ読んで質屋のおっさんに怒られて、
5才の女の子のように涙ボロボロになった。
もうえい。45.000円で買うとく。18金のリングは6.000円や。
領収書代わりになるから、よかったらここへ51.000円と書いて。
結局、ハンカチで目を押さえながら逃げるように店を出ていった。
後で家内が私を怒る。若い女の子泣かしてどうするの、と。
確かに若い女の子が店から泣きながら出て足早に去るのを、
近所の人が見たら何と思うだろう。
橋本さんとこは、まるで時代劇に出てくるようなあこぎな質屋や。
いえ決して、そんな悪いことはしてないんですよ。